【ブックトーク】活断層のリアル |著者:尾池 和夫 氏

 日本列島には約2000本の活断層が見つかっています。1995年阪神淡路大震災の後、本格的に活断層を各地の地下構造の調査が行われ、日本列島の地下のことが世界でも珍しいほど明らかになっています。
 活断層と地震のことを初期の段階から直接研究してきた著者が、いわば集大成の形で、わかりやすく解説した新書版を出版しました。それには北海道から南西諸島までの活断層の分布図をもとにして、多数の実例を取り上げて解説してあります。
 また、活断層は大地震を発生させることで知られており、恐ろしい面に注目されていますが、実は活断層のおかげで大きな恩恵を受けている面もあり、そのことがこの本で理解できます。活断層が怖いのはほんの10秒ほどの揺れであり、後の数千年は役立つ存在なのです。
 例えば、京都盆地は多くの活断層の運動によって、周囲を山に囲まれた盆地になっており、世界的にも珍しい城壁のない都として栄えてきました。それはとりもなおさず活断層運動によってできた仕組みです。この盆地の地下には堆積層が発達し、豊富な地下水が含まれています。その地下水から茶の湯などの文化が生まれました。著者は、それを「変動帯の文化」と呼んでいます

https://youtu.be/ibHCjeQ15HE

活断層のリアル –京大元総長が語る入門講義 
著 者:尾池 和夫
出版社:PHP新書 2025年9月26日発売
ISBN-13 ‏:‎ 978-4569860015

【著者について】

尾池 和夫(おいけ・かずお)

 京都大学名誉教授。現在、学校法人瓜生山学園評議員、京都芸術大学特別研究員、静岡県立大学客員教授、地球惑星科学連合フェロー、日本地震学会名誉会員、日本活断層学会会員。
 氷室俳句会主宰、俳人協会名誉会員、日本文藝家協会会員。

【略歴】

 東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学卒業後、京都大学助手、助教授、教授、副学長を経て、第24代京都大学総長、国際高等研究所所長、京都芸術大学学長、静岡県立大学学長を歴任。日本活断層学会学会賞受賞。
 その間兼職として、地震学会委員長、日本ジオパーク委員会委員長、日本モンキーセンター理事長、日本学術会議連携会員、日本学術会議阪神淡路大震特別委員会委員、日本学術会議第24期外部評価有識者会議委員、福島第一原子力発電所事故調査委員会委員などを歴任。
 また、京都大学職員組合理学部支部長、京都府、京都市、大阪府、大阪市活断層調査委員会委員長、京都防災会議専門委員、京都市都市計画審議会委員などを歴任。

【著書】

 「中国の地震予知」「日本地震列島」「新版活動期に入った地震列島」「日本列島の巨大地震」「四季の地球科学」「2038年南海トラフの巨大地震」「あっ! 地球が・・・漫画による宇宙の始まりから近未来の破局噴火まで」「季語の科学」「季語を食べる」など多数。
俳句関係:月刊俳誌「氷室」主宰、句集「大地」、句集「瓢鮎図」、「自註句集尾池和夫集」。
※略歴は講義時点のものです。

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