私たちは、京都大学で働く教職員でつくる学内で最大規模の労働組合です。大抵の大規模事業体には労働組合はあるもので、さほど特殊な存在ではありません。

 京都大学職員組合 (京大職組)の結成は1948年に遡り、以来、教職員の雇用を守り、賃金や勤務条件の改善のための運動を継続してきました。今でこそ、パート職員や派遣職員などの非正規職員の問題が注目されるようになりましたが、京大職組は結成以来、学内非正規労働者の待遇改善の活動にも心血を注いできました。

 私たちのホームグラウンドは、京都大学という教育・研究・医療をあずかる現場です。大学に勤務される方なら、基礎研究の重要性をよくご理解されていると思います。今をときめく花形の研究も長い年月に培われた基礎研究の土壌を得て、その大輪の花を開花させることができます。しかし、近年においては成果の見えやすい研究にばかり資金が集まり、直ぐに成果が得られにくい基礎研究を支える基盤経費はどんどん削られてきています。土壌を作らずに花や果実の収穫だけを続ければ、いずれその田畑からは何も得られなくなってしまいます。京大職組はこのような状況を憂慮し、全国の教育・研究・医療関係者と力を合わせ、改善するとりくみにも力を入れています。

 組合未加入の教職員の方に組合加入をお勧めすると、多くの方が「加入するメリットは何ですか」と問われます。誠に残念ながら昨今のような社会経済情勢においては、組合費と等価あるいはそれ以上の経済的メリットを直ぐにご提示することは困難です。このことは、大学の基礎研究にも同じことがいえます。基礎研究や労働組合運動の価値は短い期間では見えにくいものが多く、そのとりくみが直ちに経済的メリットをもたらすとは限らないのです。

 たとえば、仕事を休んでも賃金が支払われる年次有給休暇は、長い労働運動の中で得られた制度です。育児休業の制度を求めて運動してきた数十年前の女性教職員たちの多くはは、自らの子育て期には育児休業を享受することはできませんでした。しかし彼女たちは、後の世代の教職員のためにも懸命に運動を続けました。その結果、今日においては男性職員も育児休暇を取得できる制度にまで発展しました。

 この他にもこれまでの労働運動によって獲得し育まれてきた諸制度は、学内のいたるところに息づいています。「労働組合のメリットは何ですか」という問いには、「今あなたが得ている勤務条件です」と答えることができるかもしれません。しかし、多くの人が過去の労働運動によって得た諸条件を当然のものとして消費し、将来のための土壌作りを怠れば、私たちの職場の未来は明るくないでしょう。現にこの十数年の間に勤務条件の後退傾向は顕著になってきています。

 労働組合の結成や労働基本権の行使は、日本国憲法や国際法でも保障された普遍的な権利です。労働組合への加入に何も臆することはありません。一方、日本国憲法は第12条でこのようにも述べています「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」。労働基本権も、これまでの運動で改善してきた勤務条件も、そして学問の自由も、労働者であり大学人である私たち自身の不断の努力によって保持してゆかなくてはなりません。

 京都大学職員組合はその不断の努力を実践するための組織なのです。あなたのご加入をお待ちしています。