2022年度 中央執行委員長 林 重彦(理学研究科 教授)

2022 年度の中央執行委員長を務めることになりました理学部支部の林 重彦です。よろしくお願いします。理学研究科・化学専攻の教員で、理論化学・生物物理学を研究しております。
時代の大きな変化のなかで、大学を取り巻く環境も大きく変化しています。時代も社会も変化をするものなので、大学がその中で変化をしていくこと自体は自然なのですが、一方、不透明なプロセスの中でその合理性を理解するのも困難な決定がなされ、結果の検証もないまま突き進んでいく事例が増えてきていると感じます。
例えば、特に私は理系の教員のため、この間の「選択と集中」の下での科学研究政策には大きな危惧を感じています。運営交付金などの教育・研究基盤に対する財政が恒常的に削減され、教育・研究を支える事務職員・教員の定員が大きく減少する一方、それを補うため、非効率かつ業務コストの増大を招くような競争的資金の獲得を強いられています。この状況下で教育・研究のパフォーマンスが上がるとは到底思えませんし、実際に、世界との比較において日本だけ顕著に研究パフォーマンスが減少していることが報道されています。
このような研究パフォーマンスの低下自体に関しては、「自業自得だよね」としか思わなくはないのですが、問題は、その変化の中で生じた歪みが、弱い立場の方に押し付けられてきていることです。教職員の定員削減により生じた業務を短期間しか保証されない財源で担うため、有期雇用化された若手研究者や事務職員の職が増大し、多くの方が不安定な生活を強いられた上に、組織としても築き上げてきた資産を失っています。実際に、次世代の教育・研究を担う若手研究者をめざす大学院生の数は減少し、また事務職員も低待遇に据え置かれた上に、培われた経験も雇止めによって消失しています。
このような歪みを、弱い立場の方に押し付け切り捨てることは、健全な社会や組織として望ましくありません。すべての構成員がより良い環境の中で働くことができる組織を構築することが重要であると考えます。職員組合は、組織や労働環境の歪みと向き合い、改善を目指すことができる重要な役割を担っていると考えています。
私自身は、これまでの組合活動の中で、歪みの中で生じる様々な矛盾に悩み、教職員の働き方を守るために必ずしも最適な行動をとれてこられなかったと反省するばかりです。しかし、一人一人では乗り越えられない困難も、多くの方の考えや声を合わせることにより改善を達成することが可能であると考えております。中央執行委員長として力不足であることは既に自覚しておりますが、皆様のご協力を頂きながら精一杯取り組む所存です。