『京都大学新聞』記事にかかわるコメント
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11月16日に当組合が国際卓越研究大学への申請反対という趣旨で行った会見について、『京都大学新聞』に掲載された記事(「職組 卓越大申請へ 懸念示す」12月1日付)には当組合の声明および会見の趣旨が必ずしも正確に伝えられていない記述があったほか、発言者の肩書きについて不正確な記述がありました。
この点について、当組合として誤解を避けるために、以下のようにコメントを発表いたします。下記、太字部分は、当該記事の一部を指します。
① 職組は、ファンドが支援大学に対して資金拠出を求めるが、配当金を予定通りに支給できない可能性があると批判した。大学ファンドの2021年度の収支は0.3%の黒字であり、目標である3%に届かない結果となった。職組は、ファンドを運用する国立研究開発法人科学技術振興機構と大学が「運命共同体」になると表現した。
・ この記事に記されている通り、大学ファンドの2021年度運用実績は、95億円、0.3%の黒字です。ただし、この運用実績は2022年3月上旬 の運用開始後わずか1ヶ月に満たない期間の結果です。この時期の株式と債券の割合は、株式65%、債券35%という大学ファンドの目指す割合とも大きく異なっています。ですので、当組合による声明および会見ではこの2021年度実績は参考にならないと判断し、大学ファンドの2022年度4月~9月の収支がマイナス1881億円、3.67%の赤字であるという事実を指摘しました(典拠は『Bloomberg』11月8日付)。それにもかかわらず、上記の記事ではあたかも当組合が「2021年度の収支は0.3%の黒字であり、目標である3%に届かない結果となった」という事実を指摘したかのような記述となっています。これは当組合の声明および会見の趣旨と異なっており、ミスリーディングな記述と言えます。
・「ファンドが支援大学に対して資金拠出を求めるが、配当金を予定通りに支給できない可能性」という表現もミスリーディングです。まず、運用益の一部が助成金として支給される仕組みですので、「配当金」という表現は不適切です。また、株式や債券の運用により資金を調達する以上、助成金を「予定通りに支給できない可能性」は当然存在しますが、当組合の声明および会見ではその点を強調したかったわけではなく、強調したのは、支援を受けるはずの大学側がむしろ大学ファンドの元本の維持・増強のために資金拠出(出えん)を求められることの異常性です。さらに、その拠出した資金が全額戻ってくる保障はないことも強調しました。「ファンドが支援大学に対して資金拠出を求めるが」とあっさり書いてしまうと、想定される事態の深刻さが伝わりにくいのではないでしょうか。
・ 上記の記事の表現を生かしながら、当組合の声明および会見の趣旨により近い表現をすると次のようになります。
「職組は、助成金が予定通りに支給されない可能性があるばかりか、大学ファンドの元本維持・増強のために支援大学は資金拠出が求められることの異常性を指摘した。報道によれば大学ファンドの2022年度4月~9月の収支はマイナス1881億円、3.67%の赤字であり、赤字のままに推移した場合には大学側が多額の資金拠出を求められる上に、助成終了時に拠出した資金が全額払い戻される保障もないと批判した。大学は助成金をもらうだけというこれまでの一方向的な関係とは異なり、大学ファンドを運用する国立研究開発法人科学技術振興機構と大学が「運命共同体」になると表現した。」
② 一方、リスクを鑑みて申請しないことに伴う損失として、職組は「京大だけが申請しなければ、日本の大学の中で浮いた存在になってしまう」可能性を挙げた。
・ このように記すと、あたかも当組合自体が「リスクを鑑みて申請しないことに伴う損失」を懸念していると述べたかのように印象を与えます。ですが、当組合が声明および会見で強調したのは国際卓越研究大学に申請すべきではない、あくまでも恒常的財源としての運営費交付金の拡充を求めるべきだということです。記事の記述は、おそらく報道関係者との質疑応答の中での回答を捉えたものと思われます。すなわち、報道関係者からの「京都大学の反応はどのようなものか?」「もしも申請しない場合にはペナルティなどあるのか?」という問いに対して、当組合として「明示的なペナルティなど存在しない。しかし、役員層は、京大だけが申請しなければ、日本の大学の中で浮いた存在になってしまうと考えているのだろう」という趣旨の回答をしました。これは申請に積極的な人びとの心中を推し測った解釈ですので、あたかも当組合自体が「申請しないことに伴う損失」を懸念しているかのような表現はミスリーディングです。
・ 上記の記事の表現を生かしながら、当組合による声明および会見の趣旨により近い表現をすると次のようになります。
「申請にまつわるリスクが存在するにもかかわらず京都大学全体としては申請する方向である理由について尋ねられて、職組は「京大だけが申請しなければ、日本の大学の中で浮いた存在になってしまう」という懸念が役員層のあいだに存在するのだろう、しかしあくまでも恒常的財源としての運営費交付金の拡充を目指すべきだという見解を示した。」
③ 会見に参加した全国大学高専教職員組合の代表は「大学の統治体制が変わり、教職員による運営関与が難しくなる。教職員が声を挙げることは大事だ」と強調した。
・ 記者会見で発言された長山泰秀氏は、全国大学高専教職員組合の中央執行委員のひとりです。中央執行委員長である鳥畑与一氏も会見に参加していましたが、発言はされませんでした。「代表」の発言という表現は誤解を招く余地があります。
以上