【ミニ講義】「農業の担い手」と担い手不足問題の深層|2023.06.22実施|第78回
【日 時】2023年6月22日(木) 12:05~
【講 師】伊庭 治彦 氏(農学部支部|農学研究科 生物資源経済学専攻)
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(いば・はるひこ)
2003年京都大学大学院農学研究科後期博士課程中退。博士(農学)。全農、滋賀県職員、京都大学、神戸大学を経て、2014年に京都大学大学院農学研究科専攻に准教授として着任し現在に至る。専門は農業経営学、農業組織論。※略歴は講義時点のものです。
【講義概要】
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「農業は担い手が不足している。」との言葉を,農業振興を検討する場においてよく耳にする。とくに,地域農業の維持の困難性に関連して「農業の担い手不足」が諸問題の根源として言及される場合も多い。しかし、「農業の担い手」が指し示す内容は一律的ではなく、農業情勢の変化とともにその内容が変化・拡張されてきた。その結果、曖昧な理解のまま言及されることも少なくない。本講義では、このような「農業の担い手」および担い手不足問題に関わる一般的な認識を深掘りすることにより,日本農業が抱える問題と今後の課題について検討する。すなわち,「農業の担い手」とはどのような主体を意味する概念であり、その不足がどのような問題を引き起こすのか,そして担い手不足の解消への取り組みについて検討する。なお、「農業の担い手」とそれ以外の一般的な農業者(農業経営体を包め「農業者」という)を区分けするのは,担い手に求められる機能であろう。したがって,その機能を充足する担い手の減少が何らかの問題を引き起こすならば,「農業の担い手不足」として認識されることになる。このため,「農業の担い手不足」を検討するには,まずもって担い手に求められる機能を定義した上で,担い手の不足が引き起こす問題との関係性を明らかにしなければならない。