弔辞 ―いまは亡き京大デモクラシーさんへ― (2026.7.9時計台前スピーチ)
お集まりのみなさま、ご通行中のみなさま、このたびはまことにご愁傷さまです。
6月16日の夜、とうとう京都大学のデモクラシーさんがお亡くなりになりました。129回目の誕生日が目前でしたので、享年128。じつに大往生でありました。
確かにここ10年は様態がかなりお悪いとは聞いておりましたが、2015年2月にはまだ吉田寮自治会との確約書に判子を押されるくらいには元気でおられました。その後急激に体調を崩されたようです。残念ながら最終的な死因は公表されておりませんが、心よりご冥福をお祈りいたします。
7月3日にはさっそく、亡くなった京大デモクラシーさんの遺言執行人と称するかたがデモクラシーさんの遺言状を携えてこちらにやって来られたということです。コクサイタクエツ研究というお名前でした。コクサイタクエツというのは耳慣れない名前と思って調べましたところ、どうやら「コ」と「タ」は定冠詞のようでした。ギリシア語やヘブライ語などの場合そうですが、名詞に定冠詞が空きなしでくっついて、私のような初学者には判読が難しいところがあります。コクサイから「コ」を、タクエツから「タ」を取りますと、「クサイ」と「クエツ」が残ります。それにしてもクサイ・クエツを研究するとはどういうことかとさらに調べてみますと、要するに軍事研究ということでした。
そういえば、京都大学の運営・方針会議、総長よりも強い権限を持っているといわれるあの会議の議長には、三菱重工という会社の社長さんだかが就いていらっしゃるのでした。三菱重工といえば、かつて反日武装戦線の爆弾闘争のまっさきの対象となった企業です。私は同世代のロックバンドU2のボノさんとともに、あのような闘争形態を厳しく批判してまいりました。とはいえ、戦争でひとを殺すための武器の生産と輸出に精を出している会社が日本にもあって、その代表は三菱重工というのだと、幼い私は頭に刻み付けたのでした。
ところで私は、亡くなったデモクラシーさんの遺言状なるものが捏造されたものである可能性はきわめて高いとみています。かつて京大デモクラシーさんがまだずいぶんお若いとき、滝川事件というものが起こって、法学部の先生方が総辞職して抗議なさったと私は歴史の時間に習いました。コ・クサイ・タ・クエツ研究さんの持ち出している遺言状がはたして本物であるのかどうか、しっかりと鑑定していただくことを、とくに法学部の先生方に是非ともお願いしたいと思います。
この場が亡くなった京大デモクラシーさんの遺徳を偲ぶささやかな時間となりますよう、みなさまよろしくお願いいたします。
あ、それから、これは私事になりますが、これを機に「京大から総長がいなくなる日」という曲を作りました。教職員の意向投票で第3位、得票率20%では、とても本当の総長とは呼べません。その意味で、デモクラシーさんの死とともに実質的に京大総長はいなくなったという趣旨でございます。いつかみなさんの前でご披露できる日がくればと願いまして、亡くなられた京大デモクラシーさんへの私の弔辞を終わらせていただきます。


